2022年7月10日、「旭川はれて」(「旭川ここはれて」より改名)がオープンして、2年半が過ぎています。いろいろな出会いとともに、お店を続けています。今回は、2022年 3月、パートナーの東日本取材に同行したときの話しが中心です。
*********
2022年
3月2日(木)
パートナーと一緒に「北鎮(ほくちん)記念館」と「デザインギャラリー」で開催している「北海道立旭川高等技術専門学院 第25回 終了研究作品展」へ行く。
2月にコインパーキングでトラブルが起き、修理に出していた車が無事納品されてきて、一安心。
自宅に戻って、唐揚げ茶ヨネーズの試作をする。唐揚げに絡めるお茶の佃煮のバランスを確認。佃煮を多めにするといい感じになった。佃煮を多くすると、見た目が黒くなるので美味しそうに見えないかなと心配はあるのだが、お茶の佃煮とマヨネーズを和えるという食べ方を知ってもらいたいので、どうしても実行したいメニューだ。今日の試作では、唐揚げは冷凍食品を使ったが、さて、どうしようか……。
3月3日(金)
11時~15時、アルバイトへ。
さて、今日は雛祭り。義母が赤飯を炊いてくれる。北海道の赤飯は甘納豆で炊く甘い赤飯が一般的だが、義母の赤飯は本州でお馴染みのササゲを混ぜて蒸す甘くない赤飯なのだ。この赤飯がとっても美味しい。義母が作る料理の中で大好きな料理の一つだ。
年中行事に疎い私は、暦に合わせて手際よく準備をする義母に、いつも感心させられている。義母と暮らすようになって、義母の料理のレパートリーの広さに驚いた。飽きないように、沢山食べて健康でいてもらいたい、そう願いながら美味しいものを作ってきたように思う。そこには母親の愛情が詰まっている。子育てをしてきた年月分の愛情の蓄積、私はいつもそんな愛情たっぷりの料理を食べさせてもらっている。本当にありがたい。
以前から「おふくろの味」を残してゆきたいなと考えていたのだが、義母の料理はまさしくその味だ。家庭から飛び出して、多くの人に義母の料理を食べてもらいたいと思う。
3月4日(土)
今日も11時から15時までアルバイト。
帰宅後、滋賀県大津市の「中川誠盛堂茶舗」さんの赤ちゃん番茶を試飲する。やっぱり美味しい。渋みがなく、すーっと体に入っていく感じが心地よい。お薦めの飲み方は煮出や水出し。とくに水出しで飲むと抜群だ。でも、急須で淹れても問題ないと思う。
さて、お店で使用する急須が決定したので、1人分の茶葉のグラム数などを決めないといけない。もちろん淹れ方も。今日は、この急須で宮城県石巻市「鹿島茶園」の佐々木さんのお茶を淹れてみる。4グラムでいいかな。
3月7日(火)
お昼過ぎに「ときわ市民ホール」調理室に行く。メニューの試作をしているメンバーが集まる試食会。私は、明日からパートナーの東日本への取材に同行することになっているため、その準備もあることから、今日の試食会には、なるべく手間のかからないお茶の佃煮タルトを持って行くことにした。
調理室へ入ると久しぶりの面々。ここにきて、各店舗ごとのメニューの特色がはっきりとしてきたように思う。どれも美味しくて、うちの味は大丈夫だろうか、取り残されたらどうしようなどと思い、ちょっと焦る。
メニュー開発担当の運営のFさんより、食品卸会社の「トワニ」さんを紹介していただいた。今まではFさんを介していたが、これからは直接連絡ができるようになる。
3月8日(水)
7時55分の旭川駅発札幌行きの特急列車に乗る。12時35分、新千歳空港発仙台空港行きの飛行機で東北取材へ向かう。この日は仙台に泊まる予定だ。
3月9日(木)
仙台市内でレンタカーを借りて出発。市内を出る前に、ずんだ餅で有名な「喜久水庵」のカフェをみつけたので、店内でずんだ餅パフェをいただいた。オープンと同時に沢山お客さんが入ってきてすごい。私のお店も、こんなふうになれたらいいな。
東日本大震災で被災した石巻市の門脇小学校へ向かう途中、桃生町の「鹿島茶園」佐々木さんに連絡して会いに行くと、とても喜んで迎えてくれた。茶畑を案内してもらいながらお話する。石巻市内の洋菓子店で、佐々木さんのお茶を使ったパウンドケーキを販売していて、好評とのこと。佐々木さんが頑張ってらっしゃるお話を伺って刺激を受ける。最近は、ほうじ茶も作り始めたと伺っていたので、忘れずに購入した。
佐々木さんと別れてから、門脇小学校と石巻南浜津波復興祈念公園へと向かった。
3月10日(金)
この日は、宮城県塩竈市の鹽竈(しおがま)神社を訪ねる。ちょうど「帆手祭(ほてまつり)」というお祭りの日。荒れ神輿と呼ばれ、担ぎ手は白装束に烏帽子を被り、境内の中を押したり押されたりで神輿が通る。うっかりしていると巻き込まれそうだ。いわゆる夏まつりのような賑やかな神輿ではなく、厳かな雰囲気の神輿だった。
神社を後にし道中を進んでいくと、パートナーが「茶匠矢部園」というお茶屋さんを見つけた。店内はとても素敵で、小さなカウンターと茶釡があって、小ぶりなシャンパングラスが下がっている。まるでバーカウンターのようだった。スタッフの女性が気さくに声をかけてくださり、さきほどのシャンパングラスに氷出し煎茶を注いで、小さなお花も添えてだしてくださった。
オーナーである矢部さんもいらっしゃって、私たちが北海道から来たことをお話するととても喜んでくださった。「若い時、2月の北海道を自転車で旅をしていたところ、車で通りかかったおじさんに、凍死するから車に乗れと世話してもらった事がある」と笑いながら話してくれた。そんな思い出もあり北海道は大好きだという。北海道を旅してまわったそうで、旅好きなパートナーとも意気投合。話に花が咲いた。
矢部さんは、現在のお茶の状況についても話してくれた。茶価が下がってきているため、茶農家は、需要の多いペットボトル用のお茶を沢山作ろうとする。その程度のお茶しか作ろうとしなくなってきているのだ、と。
「僕たち買い手がもっと厳しく、いいものを買っていいものを売ろうとしなければ技術が衰退していく。だから僕はいつもお茶の仕上げ加工をする職人さんと、喧嘩になるくらい言い合ってお茶を作っているよ」と矢部さんは語る。
宮城県はお茶の主産地ではないけれど、こんなにも熱い思いでお茶を作っている方がいるんだと驚いた。
お店の陳列棚に「伊達茶」というお茶があった。生産者の名前を見ると、「鹿島茶園」佐々木浩さんだった。あの佐々木さんだ!
そこで繋がった。何年か前に東京世田谷で行われたお茶のセミナーで、桃生茶を扱っているお茶屋さんが石巻にあって、被災しながらも高品質なペットボトルのお茶を販売したり、とても頑張っているという話を聞いたことがあった。それが「茶匠矢部園」さんだったのだ。石巻と桃生という地名だけが記憶に残っていたが、私は桃生茶の生産者である佐々木さんに先ず出会い、そして矢部さんにたどり着いた。バラバラだった点が結びついた、すごい出会いだった。
熱意あふれる矢部さんにとても感動し、矢部園さんのお茶も取り扱いたいと思った。その思いをいったん胸に留め、いくつかお茶を購入し、店を後にした。
3月11日(土)
14時45分、南三陸町震災復興祈念公園で手を合わせる。
3月12日(日)
仙台の旅も最終日。仙台空港から新千歳空港へと飛ぶ。
この日は札幌に泊まる。
3月13日(月)
札幌から道北バスで旭川へ戻った。
- この記事を書いた人
- 【リエゾン ミサ】日本茶専門カフェ店主・日本茶アルティスト
神奈川県藤沢市鵠沼海岸生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、写真家として活動するが、幼い頃から食べることが好きだったため、食の道に転向する。天然酵母パンを伊藤幹雄氏に、紅茶を磯淵猛氏に学ぶ。中国茶「アランチャンティールーム茶語(チャユー)」新宿高島屋店の勤務を経て、株式会社丸山園本店に入社。直営の日本茶専門カフェ「一葉(かずは)」で約10年間運営に携わったのち独立。「LIAISON MISA(リエゾンミサ)」を立ち上げ、お茶の販売と日本茶の魅力を伝える活動を開始。その一環として、2022年7月、北海道・旭川の商業施設「Asahikawa Harete(旭川はれて)」に日本茶CAFE/和風居酒屋 WHIZ by LIAISON MISA開店を予定している。
Asahikawa Harete(「旭川ここはれて」から名称変更)HP : https://www.asahikawaharete.com
日本茶CAFE/和風居酒屋 WHIZ Instagram:https://www.instagram.com/whiz4188/
*リエゾン ミサさんSNSは以下です。
Instagram:https://www.instagram.com/liaison.misa/
Blog:https://ameblo.jp/liaison33/