
作・庭野ち草/絵・小林龍夫
「空をもっていっちゃぁだめだよぅ」
ポコポはなきべそをかきました。
「私のなかまをつれていくなんて」
山ドリのオバサンはプリプリとおこりだします。

「ぼくたちがないたり、おこったりすると、なかまたちも、ないたりおこったりするよ」
ピョイはポコポとオバサンにいいました。
「そうだったわね」
「そうだね」
オバサンとポコポはピョイのいうとおりだとおもいました。
ポコポがなみだをふきながら、トラックにのせられた空をのぞきこむと、空のなかまもなみだをふきながら、
ポコポをみていました。
ポコポがちょっぴりはずかしくなって、頭をかくと、空のなかまもはずかしそうに頭をかきました。
そのようすがあまりにおかしいので、ピョイとオバサンは、おもわずわらってしまいました。
ポコポもつられてわらいます。
「ほら、なかまたちもなかよくわらっているよ。なかよしっていいね」
ピョイがそういっていると、トラックのエンジンがかかりました。
「さようなら。いつかまたあおうね」
ポコポとピョイと山ドリのオバサンはなかまたちのいる空がみえなくなるまで、いつまでも、いつまでも手をふりました。

- この記事を書いた人
- 【文・庭野ち草】
1945(昭和20)年生まれ。広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。
【絵・小林龍夫】
1943(昭和18)年生まれ。ミュージシャン・作曲家。掲載の絵は、茅花舎HP連載用に描き下ろしたもの。
