最新のヘアカラーで冒険することが、おしゃれを楽しむことだと、思っていました。

ところが、あるときから髪の傷みが激しくなり、毛先だけでなく、髪全体がパサパサと枯れ草のように広がるようになりました。トリートメントをすると一時的には改善されるのですが、長くは続きません。しかも、その傷みはどんどん深刻化していくのです。

この先どうなってしまうのだろうと不安になりました。そんなときに出会ったのがヘナでした。あまり期待はせずに、とりあえず試してみよう、そんな気持ちで使ったように思います。すると髪の毛の調子がよくなっていったのです。髪が落ち着くと、心も落ち着きました。

ヘナとカット専門の美容室を展開している美容師・森田要さんにお目にかかってお話を伺い、さらにヘナのことを調べていくにつれて、ヘナと美髪再生に関する本を作りたいという思いが強くなりました。

ひとつ迷いがありました。

茅花舎のある茅ヶ崎は、「渋谷の次に面積あたりの美容室数が多いらしい」と巷で頻繁に噂になるような、とても美容室の多い街です。駅前通りはもちろんのこと、駅から離れた住宅地域も、道路をはさんで向かい側に、あるいは50m間隔に3、4店舗続く風景が珍しくありません。しかも、どこのお店も、いつもお客様がいらっしゃいます。茅ヶ崎は美容室がとても元気な街なのです。

「美しい髪でいるためにはヘアカラーとパーマをやめること」

「傷んでない髪はそのままに、傷んだ髪や白髪の対策にはヘナを」

「ヘナは美容室でなくて自宅で自分でできる。ヘナを使用することは、身体はもちろんのこと経済的にも楽になります」

このよな指摘をする本をつくることは、美容師の方の活動を否定するようなことになるのではないだろうか……。なにか後ろめたいような気持ちになっていました。

「美容師を辞めるしかなかった」

そんなとき、元美容師の方のお話をうかがう機会がありました。ヘアカラーやパーマ液に、美容師さん自身がアレルギーを起こし、年月を追うごとに症状が重くなり、ついには美容師を辞めるしか方法がなかったそうです。そのような方は一人や二人ではないことも知りました。「辞める」という選択が、いかに残念なことだったかも、伝わってきました。

なかには、ヘナとカット専門の美容院があることを知り、美容師を続けることができたという、40代前半の女性の方もいらっしゃいました。自分の経験をもとにヘアカラーとパーマについてあらためて考え、学び、今後の自分の活動について考えるきっかけとなったと教えてくれました。

「美容師になるのは子どもの頃からの夢。自分のカットでお客様の髪型をつくることが楽しみでした。ところが、美容師になってみると、いつのまにか、ヘアカラーやパーマをいかに組み合わせて最新のヘアスタイルを作るか、ということばかりを考えるようになっていました。お客様の髪が傷むことも気になっていましたが、そこはメーカーが新しいトリートメントを開発してくれることに期待し、販売をする代理店(問屋)の営業の方から情報を得て、それをお客様にお伝えして施術を増やしていました」。

美容師という仕事を離れた方から伺った、この言葉はとても印象深いものでした。

美容室の形態もひとつではないと思いました。

余談ですが、ヘナとカット専門の美容室で、はたして経営が成り立っていくのかと心配をする美容師の方が多いようです。今回の『最高のヘナを求めて』は、一般の方が自分で自宅でヘナをすることをおすすめする本で、美容師の方向けの内容ではありませんが、著者の森田要さんには、美容師の方に、パーマやヘアカラーをしなくても経営が成り立つことも伝えていきたいという思いもあるようです。

100%ナチュラルなヘナを使うことは、体に優しいだけではなく、自然環境を必要以上に壊すことを防ぐこともできます。

また、ヘナの施術中は心地よく、ウトウトしてしまうこともあります。美容室がさらにリラックスできる場所になるのではないかと思います。

美容室が多い街にある出版社だからこそ、このような本を発信してもよいのではないかと思うようになりました。

※『最高のヘナを求めて』の中で、著者の森田要さんは自宅で自分で気軽にヘナをすることをすすめていらっしゃいます。

※本を制作することを決めてから、発行するまで約1年6か月。制作を決める前に森田先生のお話を伺ったり、独自で調査したりしたことで、カラーやパーマで髪が傷む仕組みをあらためて確認いたしました(髪が染まる仕組みは自分の髪をほかの物に入れ替えるようなことであること)。また、薬剤によってアレルギーがでるなど、体調を崩す美容師の方がとても多いことも知りました。「髪に対する思い、髪のお手入れに関する考え方を変えないといけない」と話す森田要さんの思いがとても大切なことを、あらためて感じました。

茅花舎